2.烏の頭脳

「三歩歩けば忘れる鳥頭」なんて言われたりするが、鳥頭もバカにしたものではない。
時に人間の裏をかくカラスの賢さは広く知られたところだと思うが、最新の研究によるとカラスはチンパンジーと同程度の賢さだ(運動の自己制御性を持つ)そうだ。

鳥類の進化の過程について(仮定も含みながら)、考えてみたい。
鳥類は外敵の少ない空に逃れる為に飛行能力を身に付け、それと同時に体重を軽くする必要性から脳は小さく抑えられた。
例えばワタリガラスの脳は、チンパンジーの26分の1ほどしかないという。

脳の大きさ=賢さ、ではない?

一般的には脳が大きいほど処理能力も高く賢いと思われがちだ。
このカラスの例は、(賢さの定義にもよるが)必ずしもそうではないことを表している。

では、どのようにして鳥類は小さい脳で賢さを手に入れたのか?

その秘密は、「小さな脳でも賢く機能 もうトリ頭とは言わせない」というテーマの記事で詳しく解説されている。
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ざっくり言うと、下記の2点だ。

1.脳の小ささをニューロン密度の高さで補っている。

脳のサイズの違いによりどうしたってニューロン数に差はあるが、鳥類はニューロン密度によってそれを補っている。
異なるニューロン郡の間で何度も情報をやり取りするが、密度が高いことでその距離が短くなり信号伝達の時間を短縮することを可能にしている。

2.本質的に脳の構造が異なり、鳥類は哺乳類とは異なる方法で認知能力の高さを実現している。

大脳は「外套」と呼ばれる上層部分とその下の「外套下部」に分けられる。
哺乳類ではこの外套の働きが認知力に大きな影響を及ぼし、外套下部では運動パターンの記憶などを行なう。
が、鳥類ではその下の外套下部でも外套と同様に認知に関わる大きな働きをしているというのだ。

その為、鳥類の脳の中で認知に関わる働きをしている部位は大きな割合を占める。
だが鳥類の外套のネットワークは哺乳類のそれと驚くほど似ている、とか。

以上、鳥類は哺乳類とは異なる独自の進化により賢さを手に入れた。

ではそもそも、なぜ鳥類は賢さが必要だったのか?
鳥類と哺乳類は自然から与えられた自由度がごく限られていた為に、認知力を向上させるという手段が生存に大きな役割を果たしてきたようだ。

こうして考えると人間も自然の一部であり、その賢さは、
他の生物と同様、生き残りの為に発達した進化の一形態に過ぎないのではないかという結論に至る。